賃貸での不満が家づくりの第一歩だった
最初の違和感
最後に退去した家は、2019年の2月に完成した、海が見える新築マンションだった。
一目惚れだった。
内装が好みすぎて、見た瞬間に「ここだ」と思った。

今まで住んだ賃貸で、一番グレードが高かったよね

新築なのに家賃も安かったし、綺麗だったし、マンションの1階が駐車場で良かったよね。
インターネットも無料だったし。(ただしあまり速くはなかった)
8階建ての5階の角部屋で、陽当たりも良く、契約の時も大家さんが家賃を1カ月無料にしてくれたりと、至れり尽くせりだった。
ベランダからは、毎年夏になると花火が見えた。
空にカラフルな火の花が咲き、遠くで響く「ドーン」という音と、窓に伝わるビリビリという振動。
音速と高速の違いを体感できるこの場所は、わたしたちにとって特別だった。

きっかけは些細なことではなかった
引っ越して1年ほど経った頃、空き部屋も埋まってきたみたいだった。
そんななか、わたしが患っている婦人病の具合が良くなく、会社を休職することになった。
手続きを済ませ、自宅療養に入ったその日、夫を玄関まで見送って、ひと息つくようにベッドに横になった瞬間――
それは、突然やってきた。
ギュイイイィィィン。
ゴゴゴゴゴ。
ゴンッ、ゴンッ、ゴンッ!!!

なに!?なに!? これは…………掃除機だ!
賃貸なのに容赦なく、掃除機のヘッド部分が壁や引き戸のレール、備え付けのシステムキッチンへぶつかっている。
それが上か下か、隣かさえも分からないけど、とにかくものすごい音。
今まで日中は会社だったから気づかなかった。

毎日これじゃあ気が休まらないなぁ
そして加わる謎のドスドス音
19:00頃に夫が帰宅してからは、本日2回目の掃除機タイムが始まったようで、そこに小さなお子さん特有の走り回っている足音が加わった。
だけなら、まだいい。
子供は元気が一番。泣くのもお仕事。
でもそこに大人が加わったらだめでしょうが。
かすかに聞こえる「待て待てー!」の声と共に、明らかに大人の体重を感じる振動がドスドス響いてくる。
大運動会はせめて昼間にしてください。
21:00近くなったら今度は、硬い何かが床に当たる音が一定間隔で聞こえてくる。
キャッチボールでもしてるのか…。

さすがにちょっと…。
明日の朝が早いので眠りたい夫が、様子を伺いに行った。
数分後に帰ってきて、キャッチボールのような音の正体を教えてくれた。

1歳くらいのお子さんだったけど、「テレビのリモコンを投げる」んだって。「注意しても聞かない」んだって。
子供は悪くないので、振動を和らげるマットを敷くとか提案したみたいだけど、あまり響いてはないみたい。
翌日、管理会社に相談したが「集合住宅なので当たり前のことです」と聞く耳を持ってもらえなかった。
これが、わたしたちの「最初の違和感」だった。